故郷を心に抱いて
三年前、東北で被災した16才の無力な少年は、
「金メダルを取りたい。それが被災地のためになると思う
から。」とインタビューに答えていた。19歳になり、
彼は金メダルを、被災地である故郷の仙台に届けた。
ソチオリンピック写真展より(於、奈良近鉄百貨店)以下同
二年前私は浮かれていた。日本男子フィギュアに現れた稀有な
才能に驚き、喜び「フィギュアスケート界の超新星」として、
前のブログで語り倒したことがあった。その末尾を「羽生結弦
のこれからの長い競技人生にも紆余曲折があるだろうが、彼の
輝きに満ちた成長を見続けてゆける幸せに思いが飛んでいく。」
と〆たのだが、19歳の若さで金メダルを得たことは、この先
彼がどのような栄光に包まれようと、今までよりさらに険しく
厳しい道になりそうだ。
2011年3月は、東京でフィギュアスケートの世界選手権が
開催される予定だった。が、東日本大震災により世界選手権は
ロシアに開催地が移った。そのロシアでの開会式は、被災した
日本への力強いエールに包まれ、厳かで暖かいものだったようだ。
この世界選手権での試合が、
被災して心折れていた羽生を再び奮い立たせた。
この時日本から出場したのは、男女シングル、安藤美姫、
浅田真央、村上佳菜子、高橋大輔、織田信成、小塚崇彦ら
日本フィギュアの黄金世代と呼ばれる選手たちである。
その後、このメンバーを中心に、東北出身の本田武史(プロ
スケーター、解説者、コーチ)、田村岳斗(同)の呼びかけ
により、日本各地で、復興支援のアイススケートチャリティ
ショーが行われた。その筆頭にいたのが、羽生と同郷のトリノ
オリンピック金メダリスト荒川静香である。荒川は、声高では
ないが、やるべきことを着実に果たしていく。
羽生は、この金メダリストの影響力を真近に見、世界屈指の
先輩スケーターたちと共に、ショーを重ねることで成長して
いった。
羽生と、被災地は切っても切れない。
一時、被災者の形容を外し、一人のスケーターとして見て
欲しいと悩んだこともあった様だが、故郷への想いが、
勝利へのモチベーションの一つになったようだ。
ソチオリンピックでも、被災地出身の選手として注目され、
優勝後のインタビューでも、「この勝利が、被災地へどの様な
意味をを持つと思うか?」と聞かれる。「金メダルを取って
みても無力感はあるが、金メダリストになれたからこそ
できることががあると思う。ここからがスタート。」と、かみ
しめるように答えた。このスタートを心から、応援したい。
過去に翻ると、2013年の世界選手権は、ソチオリンピック
日本男子代表三枠を取るための大事な試合だったが、日本選手
は振わず、羽生も悪性の風邪とけがを抱え、ショートは9位の
スタートだった。だが、あくる日のフリーでは満身創痍の体に
むちうち、「絶対に三枠を取るんだ!」という気迫にあふれ、
気力ですべりきり順位を4位に上げ、三枠を勝ち取った。
この時の闘争心には、心底恐れ入った。繊細なルックスに
反し、中身は闘牛のごとしである。
東北の人は、粘り強いと言われる。羽生の美しい演技の中に、
強い東北魂を見て、励まされる人は多いだろう。
さて、今週世界選手権が埼玉で開催される。
金メダル後の、厳しい一歩である。
気負いなく、と言ってもまだ若い。
今は、思いのままに駆けてゆけばいい。
(敬称略)
「金メダルを取りたい。それが被災地のためになると思う
から。」とインタビューに答えていた。19歳になり、
彼は金メダルを、被災地である故郷の仙台に届けた。
ソチオリンピック写真展より(於、奈良近鉄百貨店)以下同
二年前私は浮かれていた。日本男子フィギュアに現れた稀有な
才能に驚き、喜び「フィギュアスケート界の超新星」として、
前のブログで語り倒したことがあった。その末尾を「羽生結弦
のこれからの長い競技人生にも紆余曲折があるだろうが、彼の
輝きに満ちた成長を見続けてゆける幸せに思いが飛んでいく。」
と〆たのだが、19歳の若さで金メダルを得たことは、この先
彼がどのような栄光に包まれようと、今までよりさらに険しく
厳しい道になりそうだ。
2011年3月は、東京でフィギュアスケートの世界選手権が
開催される予定だった。が、東日本大震災により世界選手権は
ロシアに開催地が移った。そのロシアでの開会式は、被災した
日本への力強いエールに包まれ、厳かで暖かいものだったようだ。
この世界選手権での試合が、
被災して心折れていた羽生を再び奮い立たせた。
この時日本から出場したのは、男女シングル、安藤美姫、
浅田真央、村上佳菜子、高橋大輔、織田信成、小塚崇彦ら
日本フィギュアの黄金世代と呼ばれる選手たちである。
その後、このメンバーを中心に、東北出身の本田武史(プロ
スケーター、解説者、コーチ)、田村岳斗(同)の呼びかけ
により、日本各地で、復興支援のアイススケートチャリティ
ショーが行われた。その筆頭にいたのが、羽生と同郷のトリノ
オリンピック金メダリスト荒川静香である。荒川は、声高では
ないが、やるべきことを着実に果たしていく。
羽生は、この金メダリストの影響力を真近に見、世界屈指の
先輩スケーターたちと共に、ショーを重ねることで成長して
いった。
羽生と、被災地は切っても切れない。
一時、被災者の形容を外し、一人のスケーターとして見て
欲しいと悩んだこともあった様だが、故郷への想いが、
勝利へのモチベーションの一つになったようだ。
ソチオリンピックでも、被災地出身の選手として注目され、
優勝後のインタビューでも、「この勝利が、被災地へどの様な
意味をを持つと思うか?」と聞かれる。「金メダルを取って
みても無力感はあるが、金メダリストになれたからこそ
できることががあると思う。ここからがスタート。」と、かみ
しめるように答えた。このスタートを心から、応援したい。
過去に翻ると、2013年の世界選手権は、ソチオリンピック
日本男子代表三枠を取るための大事な試合だったが、日本選手
は振わず、羽生も悪性の風邪とけがを抱え、ショートは9位の
スタートだった。だが、あくる日のフリーでは満身創痍の体に
むちうち、「絶対に三枠を取るんだ!」という気迫にあふれ、
気力ですべりきり順位を4位に上げ、三枠を勝ち取った。
この時の闘争心には、心底恐れ入った。繊細なルックスに
反し、中身は闘牛のごとしである。
東北の人は、粘り強いと言われる。羽生の美しい演技の中に、
強い東北魂を見て、励まされる人は多いだろう。
さて、今週世界選手権が埼玉で開催される。
金メダル後の、厳しい一歩である。
気負いなく、と言ってもまだ若い。
今は、思いのままに駆けてゆけばいい。
(敬称略)
2014-03-23- 12:29 | My favorite | comment (0) | trackback (0) | top